おめがの戯れ言

医大生の日常を綴ります。お手柔らかに。

医師国家試験に上位10%で合格したので勉強について語ろうと思う

Part0. Introduction 

お久しぶりです。おめがです。

 

先日行われた113回医師国家試験に合格しておりました。支えてくださったすべての方々に感謝しております。

 

予備校の採点サービスを利用した結果、7000人中400位程度と自分でも驚くほどの結果を得ることができました。

この得点が大した点数ではないことは理解しておりますし、高得点で合格することに意味がある試験でないことは理解しております。しかし、受験エリートが集結する医師国家試験という舞台で、凡人である自分がここまでのパフォーマンスを如何にして発揮することができたのでしょうか。それは周囲のできる人間や効率の良い勉強法を探し求め、プライドを捨てて自分のやり方を変化させてきたからに他なりません。

(医師国家試験の得点や順位をほのめかすことに不快感を持たれた方がおられましたら、申し訳御座いません。これから書く文章に少しでも説得力を持たすため、そして多くの人の目にこの文章が触れるキャッチーな題名をつけるために必要だと考えております。ご容赦ください。)

 

小学4年生で中学受験向けの塾に通い始めてから今に至るまで、数多の試験を受け、その大半に勝利してきました。学生生活の締めくくりとして、全ての後輩学生に向けて、そして我が子の教育に悩む親御さんに向けて、勉強との向き合い方について書こうと思います。小学生から医学生に至るまで、全ての学生の勉強効率の向上に、ほんの少しでも寄与できれば嬉しいです。

 

これまで家庭教師や友人との勉強会を通じて、学校の勉強についていけなくなった小学生から、模試で上位1%の医学生まで、たくさんの人の勉強する姿を見てきました。

当たり前のことですが、できる人には共通点があり、できない人にもまた共通点があります。

 

「勉強しろ」と大人は言いますが、悲しいことに勉強のやり方を教えてくれる大人はほとんどいません。その量に個人差はあれど、貴重な若い人生の中の少なくない時間を勉強に捧げる人が多いと思います。ならばその効率を少しでも向上させるための工夫をするべきだと、僕は考えます。このブログを読む数分間が皆様の人生に少しでも良い影響を与えることを祈っております。

 

Part1.勉強する意味ってなんだろう

「なんで勉強しなきゃいけないの?」無邪気な小学生による、この浅いようで深い問いかけへの答えに窮した経験のある大人は多いと思います。狂おしいほどに辛くて楽しくない勉強は、しっかりとした意味づけをしてモチベーションが保たれなければストイックに継続することはできません。

 

愚か者や怠け者は差別と不公平に苦しみ、賢い者や努力した者は色々な特権を得て、豊かな人生を送ることができる。

それが社会というものです。

あなた達は、この世で人のうらやむ幸せな暮らしをできる人間が何人いるか知ってる?

たったの6%よ。この国では、100人のうち6人しか幸せになれないの。残りの94%は、毎日毎日不満を言いながら暮らすしかないんです。

いい加減目覚めなさい

日本という国は、そういう特権階級の人たちが楽しくしあわせに暮らせるように、あなた達凡人が安い給料で働き、高い税金を払うことで成り立っているんです。

そういう特権階級の人達が、あなた達に何を望んでいるか知っている?

今のままずーっと愚かでいてくれれば良いの。世の中の仕組みや、不公平なんかに気付かず、テレビや漫画でもぼーっと見て何も考えず、会社に入ったら、上司の言うことを大人しく聞いて、戦争が始まったら真っ先に危険な所に行って戦ってくれば良いの。」

 

これは2005年放送のテレビドラマ『女王の教室』のあるシーンなのですが、当時小学生だった僕は、これを見て漠然とした危機感を覚え、中学受験勉強にのめり込みました。

 

たしかに建前を抜きにして言えば「日本は未だ学歴社会だから勉強していい中学に入って、いい高校に進んで、いい大学に入って、いい企業に就職するためには今から勉強しなきゃいけないんだよ」という回答を心の中で用意してる人は多いと思いますし、そう心を納得させて勉強に励んできた人も多いのではないでしょうか。

事実、勉強をして高い学歴を得ることは「お金を稼ぐ」という点においてプラスに働くことは紛れもない事実です。そしてある程度のお金は不幸から身を守ってくれるものとして必要だと僕も考えています。

 

しかしながら「いい大学に入っていい企業に入るのが幸せなの?高い時給を得てたくさん稼ぐことが幸せなの?」と小学生に問われた時、僕には首を縦に振る自信がありません。

 

お金と幸せが相関するとは僕は思いません。幸せを得る手段はお金を得ること以外にもたくさんあるでしょう。

だったら勉強せずに他のことに時間を費やした方が人間として豊かになれそうじゃないですか?友達と遊んで、部活動をして、女の子とデートして、映画を見て、小説を読んで。勉強にかけている莫大な時間を他のことに当てられれば、得られることの大きさは計り知れません。

 

それでも僕たちは青春の貴重な時間を費やして、辛く孤独に机に向かうべきです。そのモチベーションはどこにおけばいいのでしょうか。

 

その答えは人生の可能性を常に広げることだと僕は考えています。

 

人生において、「自分のやりたいことをやって生活を送っていく」ということに勝ることはないです。少なくとも現時点で僕はそう考えています。

 

そして学生のうちに勉強しておくことは人生の大事な選択の場面においてあなたに多くの選択肢を提供してくれます。

 

自分が何になりたいのかわからない学生の方々、多いと思います。何を隠そう僕もそうでした。人生の転機はいつ訪れるかわかりません。最愛の人が病に倒れ、急に医師を志すかもしれません。だから学ぶことをやめないでください。

 

夢が決まっている人、例えば野球選手になりたい高校生はどうでしょう。どんなにあなたが才能に溢れる選手でも、挫折はいつ訪れるかわかりません。怪我をして急に目の前が真っ暗になるかもしれません。だから学ぶことをやめないでください。

 

ここまで綺麗事をたくさん並べました。

実際問題、学校で学んだことの大半は大人になると使わない知識です。微分積分を日常的に使いながら生活している人がこの日本の人口の何%いるんでしょうか。勉強は、学歴や資格や職業にアクセスするための手段でしかないのでしょうか。そんなことは絶対にありません。

 

太宰治の『正義と微笑』の中で、先生が最後に生徒たちに語りかける言葉があります。

 

「もう君たちとは逢えねえかも知れないけど、お互いに、これから、うんと勉強しよう。
勉強というものは、いいものだ。
代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、
もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。
植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。

日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。
何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。
覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。

カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、
心を広く持つという事なんだ。
つまり、愛するという事を知る事だ。

学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。
学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。
けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。

これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。
そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。
ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!」

 

勉強とは心を耕す行為です。そして教養とは耕された土地です。耕された土地に種を蒔くことでどんな未来でも育つのです。

 

Part2.勉強を構成する要素

 

教養が何だ、人生の可能性が何だと偉そうなことを述べてきましたが結局のところ勉強の客観的評価尺度は試験の点数でしかありません。

 

自分が目標とする試験で1点でも多く取り、1%でも合格する可能性をあげる、そのために死に物狂いで時間あたりの効率を上げにいくのが勉強だと自分を納得させましょう。勉強なんて誰もやりたくないのですから。教養なんて後からついてきます。

 

この世の中に存在する大半の試験は過去問の周辺知識と思考内容の焼き増しでしかありません。この認識がすごい大事です。

 

あなたが応用力、思考力、試験中のひらめきだと勘違いしているものは過去問のどこかにでてきた知識と思考回路の組み合わせでしかありません。

完全に新しい思考回路、知識がその試験の合否を分けることはありません。なぜなら誰もできないからです。仮に一部の天才のひらめきを要する内容が一定数出題される試験であっても、ミスを最小限にして取れるところをかき集めれば戦えるように試験はできています。

 

過去問およびその副産物を徹底的にやり込むこと。それがすべての試験合格への圧倒的近道です。過去問から逸脱した内容の勉強は独りよがりな自慰行為でしかありません。暇な人は趣味としてやってください。この認識を強く持ってください。大半の凡人は過去問の周辺知識すら完璧にならないのだから。

(この論理が外れるくらいの難易度のテストに挑んでおられる尊敬すべきごく少数の方々はこのブログを読んでもおそらく何も得ることはないので、このブログをお閉じください。)

 

だからといっていきなり過去問を解き始めるのが1番効率のいい勉強と言えるでしょうか。そんなことはもちろんないですよね。じゃあ勉強を構成する要素ってなんでしょう。

 

勉強はinputとoutputとrecallの3つの組み合わせです。このバランス感覚を常に持っていることが大事です。これを認識できていない人、そして大事だとわかっていながらも実践できてない人がいわゆる勉強の苦手な人には多いです。

 

まず僕が見てきた1番勉強ができない人たちはinputしかしません。教科書を読んで、蛍光ペンを引いて、読んだ気になる。ビデオ講義を聞いて覚えた気になる。例題とその解説だけ眺めて解けたような気になる。たくさんのきれいな色のペンを使って、教科書を見ながら自作のノートという芸術作品作りに没頭する。

試験ではなぜか点数が取れない。わかったつもりでいるのに解けない。覚えたつもりでいるのに思い出せない。残るのは色とりどりの蛍光ペンで使い込まれた風のテキストと、思い出の残ったノートだけです。分かると解けるの狭間に落ちていき、そのまま試験にも落ちていきます。

 

普通に勉強ができる人たちはinput主体型の彼らの勉強法の問題点を理解しています。なぜならそれは野球をしたことのない野球ファンが急にバッターボックスに立たされているような状況だから。

 

多くの人は問題演習をするでしょう。各予備校や各参考書が作る過去問ベースの問題をこなし、そして自分の弱手を分析し、解けなかった問題をかき集め、反復します。

 

飲みこみの早い、才能に恵まれた人たちはすぐに解けるようになりますし、飲み込みの遅いちょっと残念な人たちはいつまでたっても解けるようになりません。
「何だ、勉強って結局才能の有無に依存するクソゲーじゃないか。」誰もがそう思った経験、あると思います。

僕も遺伝子の暴力に何度も何度も叩きのめされ、努力が否定され、投げ出したくなる経験はたくさんしてきました。自分の1/5の時間で自分より高い点を飄々とだしてくる周囲の天才たちを見て、住む世界を間違えたと自分の選択を呪いました。

 

学生生活最後の半年間で僕はやっと気づきました。勉強の本質はinput≒新規概念の獲得でも、output≒問題演習でもありません。その本質はrecall≒思い出しです。

 

(reviewではなく自発的に記憶を呼び戻すっていうニュアンスを伝えたいので使い方があってるかあやしいですがあえてここではrecallという単語にしておきます。)

 

「復習は大事だから毎日少しでもやろう。」塾講師や教師から何度も何度も同じようなことを言われてきたと思います。
しかし、これは間違っています。正しくはこうです。「勉強とは復習が全てだ。復習以外の学習は復習を効率化するためのものにすぎない。」

 

触れてない新しい分野に触れると前に進んでいる様な錯覚に陥ります。知的好奇心は満たされ、みんなが知らないことを知っている自分にナルシズムは刺激され、根拠のない自信から試験の合格に近づいた気がします。

あるいは、自分が知らない膨大な範囲への恐怖心から前に進み続けなければならないと考える人もいるでしょう。教科書のページが進み、ビデオ講座の消化%が上がれば、何かを習得したような安心感に包み込まれます。

 

凡人の記憶はびっくりするぐらい儚いです。範囲が膨大になればなるほど、脳に詰め込んだ知識や思考回路が増えれば増えるほど、人は驚くほどのスピードで忘れていきます。


復習は自分の弱さと向き合う行為です。こんな簡単なことも忘れた自分、やってもやっても完成度の上がらない自分と向き合う行為です。そんなものが好きな人がいるわけありません。しかしできる人たちは無意識にこの辛いはずの時間に勉強時間の多くを割いています。

 

何度も何度も教科書に書いてあったことをrecallしてください。解けなかった問題は思考に必要な要素だけ抽出しておいて解説の思考回路を何度も何度もrecallしてください。筋トレのように何度も何度も負荷をかけてください。それは確実にあなたの力になります。

 

試験直前の時期になると何度も何度も触れたことのある知識や思考回路はびっくりするくらいのスピードで回せるようになります。これこそ試験に向けた勉強の本質です。復習でスピーディーに回せる範囲をどんどん広げていって忘却曲線に打ち勝ちましょう。そうなれば勝利はすぐ近くにあるはずです。復習で遺伝子の壁を乗り越えましょう。

 

Part3.医学生が辿り着いた最強の暗記法

医学生が辿り着いた最強の暗記法とかいうと魔法のような方法が出てくるのかと期待されている方も多いかと思います。残念ながらそんなものはこの世に存在しません。

 

暗記は地味な作業です。暗記忘却暗記忘却暗記忘却というループを辿る中で定着する領域を少しずつ広げていく作業です。

 

これから5つのポイントを書いていこうと思います。当たり前のこともたくさん書きますが、どれも大事なことばかりなので最後までお付き合いいただければ幸いです。

 

①脳の中に道具箱を作る

まずは正攻法から述べていきます。何事もまずは全体像を把握することは大事です。仮にどんなに試験範囲が膨大であっても最初にするべきは高速で試験範囲を1周することです。どんなに試験までの時間に余裕があると思っても、全範囲を薄く速く目を通しましょう。ここでは論理的に思考回路を追うことができる限界のスピードで、なるべく止まらずにスピード重視で回します。何も覚えなくていいです。

 

するとどうでしょう。脳の中には教科書やビデオ講座の章立てが認識され、所謂「頭の中の道具箱ができたことになります。」そこからの学習はその道具箱の中身を丁寧に丁寧に増やしていくことです。

 

この頭の中の道具箱を作らない状況で暗記を始めると、物の見つからないとっちらかった男子大学生の一人暮らしの部屋のような状況になります。そんな状況で情報を脳につめこんでも試験で取り出せるはずがありません。

 

②優先度で階層化する

試験範囲を高速で1周回すことで脳の中に道具箱が出来上がりました。次にするべきなのは過去問の分析による情報の階層化です。要するに「試験に出やすいところを積極的に覚えようよ」という話です。脳に情報をしまう時は試験に出やすい情報を上の方にしまいましょう。

 

極論どんなに重要事項に思えても試験で一切問われないならその事項は覚えるに値しません。なぜなら次の試験が来る頃には人間はほとんど忘れてしまうから。「でもそんな目の前の試験ばかり見ていると本当の実力がつかないから」とかぬかしてる人はそんな寝言は目の前の試験で高得点を取ってから言いましょう。目の前の試験と全力で向き合えない者に未来はありません。

 

言い忘れましたがどの参考書やどの予備校サービスを使うのがいいかリサーチするってのも大事な勉強の要素です。ネットで、先輩の口コミで、できる友人から、手段を選ばず徹底的にリサーチをしましょう。そしてその判断基準はその教材が過去問のレベルに対して必要十分であるかどうか。情報の優先度の階層化は教材選択に左右されると言っても過言ではありません。

 

学校の定期試験を想定してこの記事を読んでいる方々は先生の授業中の発言を注意深く聞いてこの優先度の階層化を注意深く行いましょう。試験に出る所を狙い撃ちできれば高得点は簡単にあなたのものです。

 

③知識や思考回路を横で紐付けてネットワークを作る

 できる友人と一緒に勉強していて、僕が1番差を感じたのはこのポイントです。彼らは知識が横で紐付いています。記憶するときの切り口が複数あるので、問われた時に芋づる式で知識を脳内から引き出す能力に長けています。

 

抽象的な話になってしまって恐縮なのですが、例えばリンゴというモノの性質を覚えなければならない状況に置かれた時、凡人はリンゴという脳の道具箱の中に、「赤い、果物、青森県、アップルパイ…」のように知識を詰め込みます。このような道具箱を脳の中にたくさん作らなければならないのが試験勉強だと想像してください。勉強ができる彼らは道具箱同士の知識を複数の切り口で横に紐づけます。例えば「赤い」というキーワードで「リンゴ、トマト、いちご…」と道具箱同士が紐づけされて、芋づる式にその周辺知識を引っ張ってこれるようになっています。このネットワークが無数に張り巡らせているイメージです。

 

このネットワークを作るのはどうすればいいかというと、それは分野を横断して共通点をもったものをうまい切り口で結びつけるということです。ちょっと抽象的すぎるのでこれで伝わらなかった人はこの項目は無視してもらって構わないです。

 

④短期記憶は視覚と語呂で脳にぶちこむ

試験前は正攻法以外にもドーピング的な覚え方もガンガンに使っていきましょう。なりふりかまっている場合ではありません。

 

短期記憶において視覚的情報の占める重要性は大きいと考えます。誰もが試験中に一度は体験したことがあると思いますが「あぁノートのあの辺に書いてあったなあ、なんだっけ。」ってやつです。今まで出会った短期記憶が強い奴らは総じてこの能力に長けています。この時のポイントはなるべく大きめの紙を使うこと。A4見開きのノートとかiPad Proとかそういったでかいサイズ感で、ぱっと見た時に脳に飛び込んでくる情報量がなるべく大きくなるようにしましょう。

 

語呂合わせに関して。最初は僕も「語呂とかかっこ悪いし、論理的に暗記しましょうってのと対極だからこんなのに頼りたくない」とかイキって思ってました。しかし残念なことに厳しい試験中、最後ににあなたを救うのはしょうもない下品な語呂です。

 

⑤強制recall装置を作り上げる

 御託をたくさん述べてきましたがつまるところ記憶は接触回数です。みんな大好きエビングハウス忘却曲線は理に適っていて、忘却と記憶の階段を接触回数を上げることで一歩ずつ上がっていくしかありません。

 

一番実用的な話をここでしようと思います。復習の大事さ、思い出し=recallの大切さは散々述べてきましたが、実際どうやるのが一番効率がいいのかってのは難しい問題です。

 

例を出しましょう。みんな大好き暗記赤シート&緑ペンみたいなものは強制recall装置の代表例です。あの勉強法が定着するのはノートの内容を消して強制的にrecallする機会を作っているからです。他に例を出すならいわゆるflash card形式。表に問題やキーフレーズを書き、裏に答えや連想しなければならない思考回路を書く。これも捲ることでrecallの機会を作っています。

 

そしてこれら2つの方法が非常に有効なのは高速で周回可能だからです。ノートを覚えてそれを1から思い出しながら書くみたいな勉強は時間がかかるのでオススメしません。書き出すという行為は勉強の中でも最も時間のかかる行為の1つなので、自分がどうしても覚えられない超重要事項をまとめて覚える時の究極の奥の手という認識を持ちましょう。

 

強制recall装置を作る時のポイントはrecall装置を作るためにかかる時間と、定着させることのできる情報の2つの関係性がreasonableであるかどうか常に考えること。強制recall装置を作ることに労力がかかりすぎて、作ったことに満足する人は残念ながらこの世にたくさん存在します。

 

1つ僕が実際に使ってたwebサービスを紹介します。Ankiというonline flash cardです。詳細はURLを貼っておくので興味のある人は見てください。

Anki - powerful, intelligent flashcards

国試前には5000枚くらいカードを作って最後は1500枚くらい捲っていました。これで論理的には10日で国家試験の範囲全てを1周回せる計算になります。アメリカの医学生では一昔前からこれの類似サービスが流行しています。このサービスの強みはcopy&pasteができるのと、書く時間より圧倒的にタイピングの方が速いので強制recall装置を作る時間が短縮できること。他にはEvernoteに自分が覚えたい事項をまとめてスキマ時間やどこでもアクセスすることも有効でしょう。記憶するべき事項への接触ハードルをなるべく下げることと、自分に客観的なノルマを課して復習を強制化することが記憶には大事だと僕は考えます。

 

ここまで書いてきたことを要約すると①脳の中に道具箱を作って②優先度を階層化して③知識を横で結びつけてネットワークを作り④視覚や語呂でチートしながら⑤なんらかの形で高速周回する。これであなたが試験の場において他の受験者に暗記で負けることはないでしょう。

 

Part4.本番で力を発揮するにはどうすれば

 

さあここまでくれば準備は万端です。あとは本番で普段どおりの力を発揮するだけです。

でもどうでしょう。人生の分岐点となる大事な試験。降りかかる意味がわからないくらいのプレッシャー。普段は解けていたはずの問題が解けない。覚えていた筈の知識が思い出せない。焦りが焦りを生んで頭が真っ白になり、気づいたら時計の針だけが進んでいく。

 

世間には2種類の人間がいます。それは本番に強い人間と弱い人間です。どうやったら人生のかかった大事な場面で、自分の持てる力を全て発揮できるのでしょうか。論理は単純です。練習を本番に寄せて、本番を練習に寄せましょう。そして自己暗示をかけて精神を意志で支配しましょう。
 
普段の勉強でoutput=問題演習をしている時、あなたは本番を想定できているでしょうか。自分に本番と同様の精神的負荷をかけられているでしょうか。「1問あたり解くのに何分かかって、見直しは何分間でして、正答率はどれくらいなのか。」それを把握しながらoutputできているでしょうか。もしそれができていないのなら、それはあなたの怠慢です。あなたは本番に弱いのではなく、ただ準備が甘いだけです。
 
例えば数学の問題を解く時、ストップウォッチでラップをとって1問に何分かかるのか把握しながら解き進めてみましょう。問題を解くのに詰まった時、自分がどの程度の時間を消費してしまうのか、どこで見切りをつけて次の問題に行くべきなのか、練習から体に時間の間隔を染み込ませましょう。あるいは新規演習をする時、自分の正解率に常にフィードバックをかけながら解きましょう。そうすれば自ずと自分の問題点は見えてきます。

 

馬鹿馬鹿しいと感じるかと思いますがそれくらい徹底的にやりましょう。練習の時のメンタルを限りなく近く本番に寄せていきましょう。こなす練習に意味はありません。outputの時は「1点でも多く拾う」という本番と同じ気持ちを常に持ちましょう。
 
いかに完璧な準備をしたとしても、本番の雰囲気に飲まれてしまう人もいるでしょう。本番の雰囲気に打ち勝つ術はルーティンを決めることです。試験直前の時間の使い方をルーティンに乗せることで、試験場の雰囲気を強制的に自分の成功するペースに持ち込みましょう。

前日のベッドに入る時間、当日朝食べるもの、使う筆記用具、試験1分前にする動作、問題を解く時の挙動、全てをルーティン化しましょう。バッターボックスに入りピッチャーに向けてバットを垂直に立てるイチローのように神経を研ぎ澄まして、成功する勝ちパターンに目の前の試験を引きずり込みましょう。

 

試験前、誰もが不安になります。その試験が自分の人生にとって大きなものであればあるほど、不安は増幅するでしょう。眠れなくなったり、食べ物が喉を通らなくなったりするかもしれません。でもこの「落ちたらどうしよう。」という不安を感じることは正常です。試験前の不安は自分だけが感じるものではありません。みんな強がって取り繕いますが、受験者全員が抱えているものです。この認識はとても大事です。不安は消すのではなくうまく付き合いましょう。

 

その上で、「自分は合格できる」という強い自己暗示をかけましょう。何度も何度も声に出して、念じて、合格した後の自分の姿を脳の中にイメージしましょう。心が折れそうになった時は、今まで自分を突き動かしてきた原点に戻りましょう。そして支えてくれる両親や周囲の人に助けを求めましょう。

努力は時にあたなを裏切るかもしれません。しかし、「正しい方法で正しい量だけなされた勉強」というものが試験においてあなたを裏切ることは決してありません。運命なんてものは意志の力で捻じ曲げてやりましょう。

 

Part5.終わりに


気づけば文字数は1万字を超え、ここまでたくさんの偉そうなことを書いてきました。今まで書いてきたことは、僕が出会ったたくさんの「できる人たち」の要素をまとめたにすぎません。全ての方々に感謝しています。

 

この記事が誰かの人生を少しでも良い方向に変えることを祈っております。またどこかでお会いしましょう。

 

おめが

医大生が面白い小説を本気で25作選んだので読んでくれ。

 

世の中に小説多けれど人生短し。

 

つまらない小説なんて読んでいる暇は人生に存在しない。だったら最高な小説だけ読めばいいじゃないか。

 

絶対に読んで損しない25作を暇な医大生が本気で選んだのでみなさんとりあえず読んでみてください。

 

え?小説なんて読んでなんのメリットかあるかって?

 

そんなものは存在しない。いいから黙って読め。最高のエンターテイメントがそこにある。

あともしかしたら他人の気持ちがちょっとわかる話の面白い人になれるかもよ。

 

さあ最高の読書体験の幕開けだ。

 

1.

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半落ち横山秀夫

殺害から自首までの2日間の行動だけは頑として語ろうとしない犯人。犯人が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとは。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。横山秀夫ストーリーテリングのうまさが光る。全ての男の胸を熱くする傑作です。

 

2.

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神々の山嶺夢枕獏

カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはエヴェレスト初登頂という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はある男と邂逅する。息づかいすら聞こえてくる圧倒的な描写力。山岳小説の新たなる古典。

 

3.

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蜜蜂と遠雷恩田陸
私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。クラシック音楽の描写という難題を軽々と乗り越え、直木賞&本屋大賞ダブル受賞という異例の快挙を成し遂げた恩田陸の到達点。

 

4.

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「未必のマクベス」早瀬耕

IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。騙されたと思って178ページまで読んでください。徹夜を保証します。

 

5.

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「マチネの終わりに」平野啓一郎

天才ギタリストの蒔野と通信社記者の洋子。 深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか。結婚した相手は、人生最愛の人ですか?愛し合う2人がなぜ別れなければならなかったのか。恋の仕方を忘れた大人に贈る恋愛小説。

 

6.

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「砂の王国」荻原浩

全財産は、3円。大手証券会社勤務からホームレスへの転落。極貧の日々の中で辿りついた公園で出会った占い師と美形のホームレス。「新興宗教創設計画」が幕を開け、はじき出された社会の隅からの逆襲が始まる。社会のどん底からの痛快な逆転劇。ストーリー運びの上手さが光る傑作。

 

7.

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新世界より貴志祐介

ここは汚れなき理想郷のはずだった。 1000年後の日本。子供たちは、大人になるために「呪力」を手に入れなければならない。一見のどかに見える学校で、子供たちは徹底的に管理されていた。 いつわりの共同体が隠しているものとは。圧倒的世界観で描く2008年日本SF大賞受賞作。

 

8.

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私という運命について白石一文

大手メーカーに勤務する亜紀が、かつて恋人からのプロポーズを断った際、相手の母親から貰った一通の手紙。女性にとって、恋愛、結婚、出産、そして死とは。運命の不可思議を鮮やかに映し出す感動長篇。白石一文が美しい描写で描く、1人の女の人生と運命。

 

9.

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「楽園のカンヴァス」原田マハ

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵を見る。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げた。リミットは7日間。原田マハの良さ全開の美術ミステリー。山本周五郎賞受賞作。

 

10.

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「美しい星」三島由紀夫

自分たちは他の天体から飛来した宇宙人であるという意識に目覚めた一家を中心に、核時代の人類滅亡の不安をみごとに捉えた三島由紀夫の異色作。SFというジャンルを借りたポップでモダンな三島由紀夫の魅力を再発見させられる作品。 

 

11.

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ガダラの豚中島らも

民族学学者・大生部多一郎。妻の逸美は娘を事故で亡くして以来、神経を病み、新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てる…超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。2ちゃんねるで大人気の極上エンターテイメント。徹夜必至です。

 

12.

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サラバ!西加奈子

父の赴任先であるイランの病院で生を受けた圷歩。問題児の姉とともに帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。周囲にすぐに溶け込んだ歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。 そんな折り、父の新たな赴任先が決まる…西加奈子渾身の直木賞受賞作。

 

13.

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「紙の月」角田光代

ただ好きで、ただ会いたいだけだった。わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。恋に狂う梨花が最後に見つけたものは? 宮沢りえ主演の映画化で話題を呼んだ、あまりにもスリリングで狂おしいまでに切実な角田光代の傑作長篇小説。

 

14.

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痴人の愛谷崎潤一郎

生真面目なサラリーマンの河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを自分好みの女性に育て上げ妻にする。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの肉体に翻弄され、譲治は身を滅ぼしていく。大正末期の性的に解放された風潮を背景に描く、ど変態谷崎潤一郎のエロティシズム傑作。

 

15.

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「怒り」吉田修一

殺人現場には、血文字「怒」が残されていた。事件から1年後の夏、物語は始まる。逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか。 誰かを「信じる」「愛する」ということの意味を考えさせられる。あなたは大切な人がもし殺人犯でも愛せますか?吉田修一の新たなる代表作。

 

16.

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冷静と情熱のあいだ辻仁成×江國香織

2000年5月25日ミラノのドゥオモで再会を約束したかつての恋人たち。江國香織辻仁成が同じ物語をそれぞれ女の視点、男の視点で描く。完璧な恋愛小説なんて存在しない。それは男女片方の視点しか描けないからだ。その点でこの作品は完璧な恋愛小説なのよ。

 

17.

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「何者」朝井リョウ

就活の情報交換をきっかけに集まった、5人の大学生。影を宿しながら光に向いて進む、就活大学生の自意識をエグいくらいリアルにあぶりだした直木賞受賞作。悔しいけども朝井リョウは僕たちの時代を代表する作家だ。間違っても就活中に読まないでください。

 

18.

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火車宮部みゆき

本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。徹底的に足取りを消して失踪した彰子。なぜ彰子は自分の存在を消さねばならなかったのか?その鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。近代ミステリーの金字塔。

 

19.

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「ハーモニー」伊藤計劃

21世紀後半、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した…カルト的人気を誇る「虐殺器官」の著者が描く、ユートピアの臨界点。

 

20.

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砂の女安部公房

砂丘に出かけた男が砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のなかに光る安部公房の美しい描写。今読んでも面白い古典的名作。

 

21.

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燃えよ剣司馬遼太郎

幕末の動乱期を新選組副長として剣に生き剣に死んだ男、土方歳三の華麗なまでに頑な生涯を描く。己れも思い及ばなかった波紋を日本の歴史に投じてゆく。竜馬がゆくと並び、司馬遼太郎の“幕末もの”の頂点をなす長編。司馬遼太郎大先生の作品群で1番熱い想いを感じる作品。

 

22.

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ノルウェイの森村上春樹

限りない喪失と再生を描いた究極の恋愛小説。1番多くのハルキストを生みそれと同じくらいのアンチを生んだ代表作。高1で読んで以来一度読んだ小説を読み返さない自分が唯一と言っていいほど読み返す作品。大っ嫌いで大好きな村上春樹の愛おしい傑作。みんなの特別な一冊。

 

23.

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「告白」町田康

人はなぜ人を殺すのか。河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説。第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。エンターテイメントと文学性の幸福な共存。誰にも真似できないリズム感。

 

24.

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「教団X」中村文則

謎のカルト教団と革命の予感。自分の元から去った女性は公安から身を隠すオカルト教団の中へ消えた。絶対的な悪の教祖と4人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。米紙WSJ年間ベスト10小説。著者渾身の問題作。

 

25.

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「こころ」夏目漱石

学生だった私は海岸で一人の男と出会った。不思議な魅力を持つその男は手紙だけを残してこの世から去る。明らかになる男の人生の悲劇。それは親友とともに一人の女性に恋をしたときから始まったのだった。言文一致後の日本文学界における起源にして頂点と言える漱石の古典的傑作。

 

いかがでしたでしょうか?
「選ぶセンスなくない?もっと面白い小説があるよ。」という方は是非コメントください。楽しみにお待ちしております。
 
みなさんの読書人生が豊かになることを祈って。
 
おめが

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皆様初めまして。おめがと申します。

現在、日本の何処かで医大生をしています。

 

Twitterのフォローワー数も増えてきたので僭越ながら、はてなブログを開設しました。

 

今までの人生で気に入った本映画レストランをまとめて皆様にお伝えしたり、日常生活で感じたこと気になったことを自分の中でまとめたりしようと思っております。

 

まだ更新頻度もブログのテーマもあやふやな状態なので、こんな記事が読みたいよ。みたいなご意見が御座いましたら、twitterのDMやコメント欄、リプ等でお願いします。

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至らないところばかりとは思いますが、お手柔らかに。

では、近いうちにまたお会いしましょう。

 

おめが